恋色シンフォニー 〜第2楽章〜

真木さんと望月さんが帰った後、リビングのソファにぐでっとする。

「疲れたー。後の荷解きは もう明日でいいかなぁ」

「今日やっちゃった方がいいと思う」

「えー、明日でいいよ」

「……明日、できないと思うよ」
ぼそっと圭太郎が言った。

「え? なんで?」

「僕、晩御飯作るね」



晩御飯は、海鮮ちらし寿司、ほうれん草のおひたし、かぼちゃの煮物、茶碗蒸し。
私が好きなものを作ってくれたんだ。
ほんと、家事力、私より高い。
私にはスパークリングワインもつけてくれた。

「圭太郎は飲まないの?」

「アルコール入ると感覚狂うから、パガニーニ弾けなくなる」

「……ほんとに弾いてくれるの?」

「当たり前でしょ。綾乃がちゃんと引越してきてくれたから、僕も約束を守る。
今日は僕が先にお風呂入っていい? 綾乃が入ってる間に練習したい」

「うん、いいよ?」

いつも楽器を弾いてくれる時は、お風呂の前なんだけど。
楽器弾いた後は身体をほぐしたいから、って。

今日は汗とホコリを落としたいからかな?


圭太郎がスパークリングウォーターの入ったワイングラスを掲げた。

「では、改めて。

これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

乾杯。

……うん、幸せ。




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