誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
藤堂は、自分に言い聞かせているようだった。
新撰組を離れるという選択は、藤堂にとって決して曲げられない道だったとしても、近藤たちを裏切る行為が藤堂を苦しめないはずはなかった。
御陵衛士は全員、藤堂とよく似た葛藤に苦しんでいる。
順繰りに不寝番を立てながら眠りに就くとき、いつ襲撃されても対応できるようにと、皆、刀を抱いたまま目を閉じていた。
伊東は、休むように勧められても、結局じっと起き続けている。
眼下に隈をこしらえた端正な伊東の顔を、斎藤は薄目を開けて見つめながら、そっとため息をついた。