誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―


伊東さん、賢いはずのあんたが何でこんな下手をやらかしたんだ?


話をするのが大事だと言うなら、近藤さんや土方さんと話せること、話すべきことが、もっとあったんじゃないか?


それなのに、こうして無断で離脱した。


新撰組の士道は、裏切り者のあんたを絶対に生かしちゃおかない。


話を、すればよかったのに。



斎藤も結局、眠ったふりだけで一睡もしないまま、翌朝を迎えることとなった。


慶応三年(一八六七年)三月十一日の朝は、晩春とも思えぬほど冷え込んでいた。


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