誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
驚きのまなざしが斎藤に集中している。
年上の人の、と声に出してみれば、するすると全ての掟が口を突いて出た。
とっくに忘れ去ったつもりの幼い日の記憶を、滅多に動かぬ舌がきちんと覚えていた。
母方が会津なのですと、斎藤は短く釈明した。
実際のところ、それ以上は斎藤自身にもわからない。
家系の来歴など、ろくに知らない。
十九の頃に人を殺して以降、実家とも絶縁状態だ。
容保公が、声を立てて笑った。
面会をする間ずっと微笑を浮かべていた容保公だが、初めて心から嬉しそうに笑った。