クールな准教授の焦れ恋講義
「でもな、俺はお前の指導教官でもあって十も年上の大人なんだ。お前のこれからのことを考えたら素直に気持ちに応えることなんて出来ないだろ。もしかしたら俺に抱いているのはただの憧れで、これから本当の恋を知っていくのかもしれない。それぐらいの年頃が抱く気持ちなんて一過性のものが多いことだってよく知ってるからな」

「なんでそんな風に言い切れるんですか」

 きっぱりと言い切る先生に自分の気持ちが軽く見られた気がして、つい反論してしまう。

「学生に告白されるのは早川以外にもあったよ。確かに、そのうちどれぐらいが本気かなんて俺には分からない。でもな、現に友達とキャーキャー騒ぐだけの奴もいたし、こちらの立場なんておかまいなしの奴もいたよ」

「私も彼女たちと同じだと思った?」

 だとしたら心外だ。少しだけ間があって先生は頭を掻きながら視線をわざとらしく外した。

「そうじゃないと思ってたよ。でも確信をはっきりもつことも出来なかったし。それに、あのとき断ったのはお前が一途に向けてくる気持ちが怖かったのもあったんだ」

「こわい?」

 胸が軋む。『早川にはいつも困らされてばかりだよ』という先生の台詞が頭を過ぎった。

「怖いに決まってるだろ。ろくに恋もしたことがない高校を卒業したばかりの十八かそこらの女子にあんなに何年も一途に想ってもらって。本気になれば馬鹿を見るのはこっちだ。さっきも言ったようにどうせ卒業して社会人になって環境も人間関係も変われば、気持ちだって変わる。そのとき「やっぱりこの気持ちは間違いでした」って言われて、あっさり手放せるほどこっちは余裕も優しさもないんだ」

 一気に捲し立てられ私はぽかんとするしかなかった。いつも道筋立てて話す先生が感情を露にして話すのは本当に珍しい。首に手を当てて項垂れながら思い出すようにさらに続けられた。
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