あなたの願いを叶えましょう
「なに?惚れた?」

目が合うとナオシはヘラリと笑い軽口をたたく。

しかし、このニヤけ顔には何処か見覚えがある。

垂れ目……ニヤけ顔……低く甘い声……

3つの単語が私の中でリンクする。

「まさか……黒澤……波留?」

ナオシはその名前を出すと目を大きく見開いた。

「なに?波留のこと知ってんの?」

「だから言ったじゃない。会社の後輩だってー」

梁川さんは不満気に赤い唇を尖らせる。

そっかー!と言ってナオシは白い歯を見せてニッカリ笑った。

「弟がいつもお世話になってます!」

「は?弟って?誰が?」

ポロっと放ったナオシの台詞に我が耳を疑った。思わずタメ口で聞き返す。

「だーかーらー、波留が、俺の、弟、だよ」

波留が、ナオシの、弟?

ってことは、ナオシは、波留の、兄?

「はあぁぁぁああ?!」

次の瞬間、私の大声が怪し気なタイ料理屋にこだました―――。
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