あなたの願いを叶えましょう
富樫は無言のまま、PCの蓋をバタリと閉じて、デスクに備え付けられた引き出しをガラリと開けると、中から黒革の鞄を半ば無理矢理とりだした。

「おおおおおつかれ」

どもりながらも挨拶すると、小走りで慌ててオフィスを後にする。

「おい、シャットダウンはしなくていいのかよ!」

後ろ姿に声を掛けるが返事が返ってくることはない。

逃げられたか……

俺は小さく舌打ちする。

椅子の背もたれに富樫の愛用しているフリース生地のモコモコしたピンクの膝掛けがかかっている。

花のような甘い香りを思い出し、思わず手を延ばしたが、匂いを嗅いだら完全に変態なので、ぎゅっと拳を握り閉めた。
< 199 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop