あなたの願いを叶えましょう
ああ、結婚するってこういう事なんだ。

何も言わずとも通じあう二人から、目には見えない絆を感じて、感動すら覚える。

俺もいつか、誰かとこんな関係を築くことが出来るんだろうか。

ずっと先の遠い未来のようにも思えるし、そう遠くない未来のようにも思える。

そう考えたら、ふと、丸くて茶色い瞳が頭を過る。

「おめでとう、兄さん」

ナオシの肩を叩いて、俺はその場を後にする。

富樫に電話してみようかな。

なんだか声が無償に聞きたくなった。

スマホのロック画面を解除すると、タイミングよく電話が掛かってきた。

ディスプレイに表示された名前は課長のものだ。

俺は慌てて通話ボタンをおした。

『黒澤』

スマホから聞こえて来た声はいつもより低い気がした。

なんだか嫌な予感がする。

『月曜日、朝一で部長も交えてミーティングをする。梁川も出社できる状況だったら伝えておいてくれ』

うーん……これは、嫌な予感しかしない。
< 207 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop