あなたの願いを叶えましょう
ホームに降りたつと、隅に置かれたベンチに倒れるようにして座りこむ。

隣に座るカップルが、しっぽりいい雰囲気で見つめ合ってったっけ。

なんてフト思ったものの、今の私には気遣う余裕なんてない。

膝の上に顔を置きギュッと目を閉じて目眩をやり過ごす。

「いつもみたいにうちに来ればいいじゃん」

カップルの会話が嫌が応にも耳に入ってくる。

どうやら男性の方が部屋に誘っているようだ。

「でも…いつも黒澤くんに頼ってばかりだから」

くろさわ…

あのムカつく男と同じ名前か。

なぁんてグルグル回る脳の片隅でそんな事を思っては少しイラっとする。

「黒澤くんって…随分他人行儀だな」

それにこの男性も黒澤波留と同じように、甘く響くなかなかよい声をしている。

「それじゃ…はるくん」

女性がその名前を呼んだ瞬間、反射的に頭を起こした。


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