あなたの願いを叶えましょう
信じがたい光景に大きく目を見開きギクリと固まる。

一瞬にして目眩がぶっ飛んだ。

これがショック療法っていやつなんだろうか。

「黒澤…さん?」

そこにいたのは、物腰柔らか…だけど実はしつこくて腹黒い私が大嫌いな男。

もっと驚いたことに、一緒にいたのは、同じく事業統括部で黒澤氏の先輩にあたる梁川女史だった。

こんな時間に二人っきりで駅のベンチに座って何しているんですか?

なぁんて聞くほど私も野暮じゃない。

瞬時に二人の事情を察する。

なんてったって大人ですから。

「富樫さんは、どうしてこんなところにいるのかな?」

黒澤氏は落ち着いた声のトーンで尋ねる。

「私の家、目黒線沿いなんですよ」

「僕と一緒だね」

おい黒澤、お前いま完全に墓穴掘ったぞ。

と、思っても口にはださない。

自宅の沿線の駅で、女性と二人で見つめ合ってたってことはこの後どうするつもりだったのか想像するのは容易いことだ。

実際口説いてるの聞いちゃったしね。
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