あなたの願いを叶えましょう
「かわいいな、まどかは」

不意に耳元で名前を呼ばれ、くらりとする。甘く響く声でそれは反則だ。

私の顔に骨ばった手を添えて黒澤波留はそっと身体を離す。

至近距離で黒目がちな目が私を捉えると、そのまま、ゆっくりと綺麗な顔が近づいてくる。

反射的に目を閉じると、唇にフワリと柔らかい感触が重なる。

黒澤波留の唇だ。

この感覚を脳裏に刻もうと、私は全神経を唇に注ぐ。

ああ、この瞬間が永遠に続けばいいのに。

そう思う私の気持ちとは裏腹に、触れ合うだけのキスをして黒澤波留はそっと唇を離した。

「それで……これから、どうする?」

黒澤波留は曖昧な問いを投げかけてくる。

なんか……色々意味深だ。

私たちの今後の関係性を問うているのか、はたまた今晩、今、nowどうするのかを問うているのか。

「今晩はずっと一緒にいたい」

そう言って、その広い胸に寄り添って黒澤波留の家について行きたい。

私の本能はそう叫んでいる。
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