あなたの願いを叶えましょう
そして月曜日

駅から会社までの道をトボトボ歩いていると「おはよ、冨樫さん」声を掛けられた。

振り返ると爽やかな笑顔を湛えた黒澤氏。

颯爽とした足取りでそのまま私を追い抜いて行こうとする。

「ちょっと待ちな!」

私も早足で黒澤波留を追いかける。

「なんだよ」眉根を顰めてちょっと嫌そうだ。

「金曜日の飲み会の後、何処に行ったの?!」

そう、金曜日の夜この男は忽然と姿を消したのだ。

…優奈の後輩を連れて。

最初は事態が飲み込めず、神隠しにでもあったのかと思った。

ああ、と言って黒澤氏は視線を宙に泳がせる。

「其処はほら、大人だから」

曖昧に言葉を濁しニコリと微笑んだ。

「最低!最悪!この鬼畜!私の願いを叶えるどころか自らの性欲を満たすなんて!」

思いのほか声が大きかったのか、すれ違うサラリーマンやOLがギョッとした顔で此方を振り返る。

「おまえ性欲って…朝から下品だな」

黒澤氏は軽蔑の眼差しで一瞥すると歩くスピードを更にあげる。

「自分の事を棚に上げて何言ってんのさ!」

私は悪態をつきながら小走りで食らいついていく。
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