あなたの願いを叶えましょう
「伊神さんも呆れてたよ!」

その名前を聞いて、黒澤波留は此方へチラリと視線を向ける。

「伊神とはなんかあった?LINE交換した?」

私はキッと睨みつける。

「するわけないじゃない!私を貶めるようなエピソードを得意気に披露しちゃってさ!あんたやる気あるの?!」

必死に抗議する私を見て、黒澤波留は愉快そうにケラケラ笑っている。

「もうこうなったらあの事バラしてやるから!」

捨て台詞を吐いて私はダッシュで逃げる。

おい!と背後から呼び止められたけど、私は聞こえないふりをした。


デスクに座り、パソコンを起動させていると野口さんが椅子ごと近づいてきた。

「見たよ、冨樫」

「何をですか?」

私は仕事の準備をしながら尋ねる。

「あんた今朝若さまと出勤して来たでしょ」

見られてたか。

思わず舌打ちしたくなる。

「たまたま通りすがりに一緒になったので」

ほーお、と言って野口さんはデカイ顔でググっと迫って来た。

朝から香水の匂いがきっつい。
< 65 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop