聖獣王と千年の恋を


 どうしてワンリーはシュエルーの生まれ変わりだからという理由だけで、メイファンを愛していると言えるのだろう。
 メイファンはうつむいて独り言のようにつぶやいた。

「そんなにシュエルーとは似ていないのに、ワンリー様は私の何を愛しているの?」
「おそらくはあなたの意志の強さと他者を思いやる優しさを愛しておいでだと思います」
「え?」

 メイファンは顔を上げてエンジュを見つめる。目が合うとエンジュは穏やかに微笑んだ。
 慰めるためだとしても、どうしてそんなに断言できるのだろう。

「私のことはよく知らないと言いませんでしたか?」
「ええ。よく知りません。けれど根幹をなす部分がシュエルー様と同じなんです」
「どうしてそんなことがわかるんですか?」
「魂の発する色が同じなんですよ。我々には見えるんです。これまでワンリー様の妻となった娘さんたちはみんな同じ色でした」

 意志の強さと他者を思いやる優しさ。そんなものが自分にあるのかメイファンにはピンとこない。実際に今ここにいるのも状況に流されただけのような気がする。未だに怪訝な表情をするメイファンに、エンジュはきっぱりと言う。

「本当ですよ。みんな容姿や性格はそれぞれ違っていましたが、意志の強さと他者を思いやる優しさは同じでした。同じ色の魂を持つあなたも同じはずです」
「そう……なんでしょうか?」
「はい。間違いありません」

 そこまで断言されると、それ以上何も言えそうにない。納得はしていないが黙り込むメイファンにエンジュは静かに尋ねた。

「ワンリー様のお気持ちが気になりますか?」
「え、いえ、それは……」

 しどろもどろにごまかそうとするメイファンを見て、エンジュはクスリと笑う。


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