ばかって言う君が好き。

 玄関のカギを開けると、食欲をそそられる良い匂いに迎えられた。

「おかえり~。」
 開いているリビングの扉の向こうから、彼の声も出迎えてくれる。ごはんをしてくれているようで、水道のジャーって音と、火を使う音も聞こえてきた。

私は返事もせずに、靴をそろえて足早に彼のもとに駆けた。
鞄を勢いよくその場に落とすと、私は彼の背に抱き着く。

「うわ!どしたの!」
 ふいなことに、彼の口からすっとんきょんな声が飛び出した。

「うん、ちょっと抱きつきたくなってね。ただいま。」
 ぎゅっとまた腕に力をこめる。

「……そっか、なら仕方がない。」
 なんで?と理由を聞かず、彼は手にしていたトマトをまな板の上に置いて、私の手に触れた。

「さっき電話しといたよ。いつでもいいから、うちは後回しでお願いだって。」

「俺もさっき電話で同じこと言われた。
あんないい子、いただくんだからって。」

「……」
 何も返事しないで、私は彼の背にぐりぐりと頭をすりつけた。

「何、どうしたの?」
 私はそれを続ける。

「嬉しいの?」
 動くのをやめて、うんという代わりに私は上下に1回頭を擦り付けた。

「倫子は本当、可愛いね。」
 彼は私の腕の中で向きを変えた。顔を近づけて、私の表情を見つめてくる。

「あ、あんま見ないで。」
 恥ずかしさから彼の胸に顔をうずめた。

「だーめ。」
 すぐに彼は私を体から離すと、そのままあごをくいっと持ち上げて、私に表情を近づけた。

き、キスする時の距離で見つめられるなんて、、

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