こんにちは、頭蓋さん。
隣室の頭蓋さん



ーージリリリリリ…

私の朝は、微かに聴こえる目覚ましの音から始まる。……が、一向にベルは鳴り止まない。



「……めんどう」



ふあぁ、と大きなあくびをしてゆっくり起き上がった。カーテンの隙間から差し込む日差しが眩しい。


そしてベルがうるさい。



「んー…、行くか」



そのベルは止まらない。なぜって。

それは隣人の目覚ましだからだ。



***



「…頭蓋さん」



ギュッコン、というなんともおかしな音を出すインターフォンを押す。


しかし五秒たっても物音すらしないので、鍵の外れているドアを開けて、未だにベルが鳴り響くその部屋へと静かに足を踏み入れた。


失礼します、という言葉を言う気も失せるぐらい、この部屋にはほぼ毎日入っている。



「……起きられないなら、目覚ましセットしなくていいのに」



寝室に行き、騒がしく音を立てる目覚ましのボタンをカチャンと押した。すると先ほどまでの騒がしさが嘘のように静まる。


このアパートは部屋どうしの壁が薄いから、この目覚ましぐらいの音は隣までばっちり聴こえてしまうのだ。



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