こんにちは、頭蓋さん。
「頭蓋さん。起きて」
シングルベッドで小さく寝息を立てながら寝ている彼の耳元に、そっと囁いた。
しかし彼は「ん…」と吐息を漏らすも寝返りを打つだけで目を覚まさない。
「…強情」
ぼそりと呟き、ベッドのふちに腰掛けた。顔の半分を覆う毛布を肩まで下げて、こっそり彼の顔を見つめる。
ふんわりといい香りがする茶髪に、まつげの長い目。すっと通った鼻筋、きゅっと結ばれた薄い唇。
男のくせして整った顔立ちに意味もなくイラッときてしまった。
ーーああ、私理不尽だ。
「起きなきゃ悪戯しますよ」
そんな朝からの理不尽な怒りをぶつけたくて、そう言った。よし、あと10秒経っても彼が起きなかったら、本当に何か悪戯してやろう。
そう思いたち、心の中でカウントダウンを始めながら部屋を見回して油性ペンを手にとる。
「(6……3、2、1、)」
ーー10秒。本当に起きなかった。
…うん、彼が悪い。起きなかったんだから。