こんにちは、頭蓋さん。
チャラ男と嫉妬
大学へは、アパートから駅へ10分歩き20分ほど電車に乗る必要がある。そして現在私がいるのは、朝の満員電車の中だ。
『まもなく、矢野目駅ーー』
アナウンスが流れた瞬間、電車内の空気が変わる。私も人混みの中で席から立ち上がり、出口へと急いだ。
誰かと肩がぶつかったけど、そんなこと気にしない。一期一会、もう会うことはないだろう。いや、使い方少し違うけど。
降りて、まだ出発しない電車を振り返った。さっき私と一緒に何人か降りたはずなのに、もう人がぎゅうぎゅうだ。
こんな中に頭蓋さんもいるのかと思うと、あの細い身体がどうなるか心配になる。
……いや、なに考えてんだ、私。
「ーー桐島。きーりーしーまー」
私が通う矢野目大学には、喋り方がまるでお経のような教授や部屋の照明の光を見事に反射する頭を持つ講師がいる。
一限二限と続けて彼らの講義を聴いていれば、当然眠くなるものだ。もしくは眩しくて目を伏せる。
内容は理解しているから単位さえ取得出来ればいい。つまり寝ていても問題ない。
そう思って机に突っ伏していたのだが、頭上から私の名前が呼ばれている。とうとう見つかったか。
「……そ、そんな目で見るなよ、教授じゃねーから」
教授であろうと怯まないぞと意気込み睨んだ先には、いつもピアスやらネックレスを付けて講義に参加している男がいた。
確か菓という妙な名字だった気がする。