こんにちは、頭蓋さん。
頭蓋さんはいつも車で通勤しているから、電車通学の私とはそもそもの時間が違う。
整った顔の男が綺麗なスーツを着ているのを直視出来なくて、慌てて俯いた。
「……やだ」
否定は忘れずに。
すると案外頭蓋さんは傷ついていないようで、苦笑した後店内をうろつきはじめた。
普段だったら「な、なんで⁉一緒に行こうよ!」なんて喚くはずなのに。
……なんだか、自分だけがからかわれたみたいで癪にさわる。
「……アラ、頭蓋ちゃんが大人しいわ」
「……気味が悪いです」
思わず麻野さんに本音をぶつけてしまう。……それほどに頭蓋さんの沈黙は気持ち悪い。
「……え、いや、ただ『どっちでもいい』とか思われるより『嫌だ』ってはっきりしてくれるほうがいいなって」
彼は変わっている。
付き合ってないからかもしれないけど、妙な所できっぱりと決めてくるから。……私たちの関係は曖昧なんだけど。
「じゃあまた会おうね、綾っ」
爽やかな笑顔を振りまいて、頭蓋さんはバーを出ていった。
「死ね」
もちろん丁重にお断りします。