こんにちは、頭蓋さん。
「だってもし桐島が彼氏持ってたら俺、こんなに馴れ馴れしくしてちゃ嫉妬で刺されるじゃん。世の中物騒だろ」
「馴れ馴れしい自覚があるなら寄ってこないで」
頭に手を出そうとすると、するりとかわされた。菓は立ち上がっていて。
「じゃーな桐島。明日も一緒に食おーぜ!」
嫌だと返すも彼は笑う。
と、車内人ごみの中から「ちょっとすみません」と声が聞こえる。やっぱり電車は人が多い。
そっちに興味を取られている間に、菓の姿は消えていた。
「…変なやつ。」
頭蓋さんの次ぐらいに。
そしてふと気づく。自分が誰かの影に入っていることに。
「え、」
そしてまたも気づく。
私の顔の横、窓に両手をついている男が、今朝見た美人だってこと。あれ、電車同じだったんだ。
「頭蓋さん……?」
そう小さく呟くと、男はしっかりと微笑んだ。でもその笑みは、黒い。
「誰?」
「……は?」
そのままの顔で低く問う頭蓋さんの言葉の意味がわからなくて、訊き返した。
その反応が気に入らないというように、彼は眉根を寄せる。