こんにちは、頭蓋さん。
「…さっきの彼は、誰」
……ああ。そういうことか。菓の言っていたことが本当になりつつあるなんて、世の中はーーいや、頭蓋さんは物騒だな。
いや、この人は彼氏じゃないけれど。
「あれはーー」
…ん?そういえば菓って、なんだ?
名字は菓。元矢野目高校の生徒会長で、この大学にいるちゃらちゃらした男。
そして私の講義後の睡眠を邪魔し挙句昼食に連れて行った奴。友達ではないし、もちろん恋人なんかじゃない。
途中で言葉を切った私に頭蓋さんはもっと嫌な顔をして、ぐっと顔を近づけた。
そして強引に重ねられた唇は朝とは違って甘さなんてものは無く、ただただ感情に沿って使ってるような感覚を覚える。
「……っ…、電車の、なか…ッ」
強く押し付けるキスを逃れるように、途切れる息の中でそう紡ぐ。
唇が動くのが邪魔だったのか、私の下唇だけを優しく食んでからゆっくりと顔を引いた。
その途端、一気に息を吸い込む。
「……彼、はーー大学にいた馬鹿で、馬鹿な、だけ」
意味はわからないがとりあえず馬鹿。それだけ伝えたかった。
だって友達じゃないからなんとも言えないし。どうせ知り合いと言っても納得しないだろう、頭蓋さん。
案の定彼は意味がわからないといった顔をしていて、私はくすりと笑う。
「下手な嫉妬は、やめてください」
そして頬に、短くキスをした。