こんにちは、頭蓋さん。
…ああ、朝からこんなことしてたら面倒くさくなってきた。
でもとりあえずキッチンに向かい、壁のフックに掛けておいたフライパンをコンロに置く。
火にかけている間に冷蔵庫から卵と野菜を取り出し、どんどん準備を始めていった。
「……綾ー、そこの駅から市の駅までって電車で何円ぐらい?」
「え。…んー、400円ぐらいです」
テレビでもつけているのかニュース番組の合間に頭蓋さんの声がきこえた。私はリビングの方を振り向かずに答える。
「なんで電車ですか?いつも通勤は車ですよね」
頭蓋さんは社会人。多分25歳とかそこらだ。美術関係の仕事をしているらしい。
当然車の免許も取得済みで、黒の大人っぽい車まで持っているはずだけど。
不思議そうな顔がわかったのか、頭蓋さんは苦笑しながら頭をかく。
「この間傷付けてさ。代車がちょっと…というかかなりダサいから。あまり乗りたくない」
「…ナルシスト」
「いや、本当にダサい。見れば分かるから」
どれだけ嫌がるんだ。