こんにちは、頭蓋さん。
思いがけぬ誘い
「最近痴漢が多いらしいですね」
何気ない世間話のつもりだったが、そう告げた瞬間キッチンからまさにどんがらがっしゃんと表現するに相応しい音が聞こえた。
たまには食器洗いをするというのに甘えた私が馬鹿だった。朝から幸せが逃げるなーと思いつつ、ため息をつかずにはいられない。
キッチンを覗いたが、頭蓋さんと落とした皿諸々はスポンジによって無傷だった。
「大丈夫ですか?」
「綾痴漢されたの!? いつ、どこで!」
話が色々と噛み合っていない。
はあ、ともう一度ため息をついて、ことの次第を伝える。
「駅で痴漢防止の呼びかけがあってたんです。それにしても痴漢って……世の中いろんな趣味の人がいるんですね」
この間から朝の時間、駅員がメガホンを使って呼びかけているのを見かけていた。
特に男性はよく駅員から見られているように感じていたのだ。
そう説明をすれば勢いよく肩を握ってくる頭蓋さん。痛い痛い。
「綾危険じゃん!」
「……大丈夫ですよ、私は」
「そんなことない、綾は可愛いんだから」
「……キモい」