偽りの花嫁
それでも悪あがきはしてみたい。もしかしたら逃げられるかもしれないからだ。
「私はあなたとは結婚しません」
本当に子供の悪あがきに過ぎない台詞だと自分でも笑ってしまいそうだ。それでも、18歳の誕生日だけが私の希望であり未来だと思っていた。
「だったら貸した金を耳を揃えて返してもらおうか?」
旦那様は顔色ひとつ変えずに返済するように言う。そんなお金が有れば最初から借りてなどいないと分かっているにも関わらず、旦那様は酷いことを言う。
「......そんなお金ないですっ」
「なら、その体で支払え」
私は最初から借金のカタとして囚われていたのと同じだったんだ。親に身売りされたのも同じだったのだ。
「碧、この結婚は二年前から決まっていたんだ。今更覆ることはない。諦めて俺の花嫁になれ。いいな」
結婚するのならせめて優しい言葉をかけてくれれば多少なりとも幾分か気分は晴れるだろう。けれど、低い声で冷たく言い放たれては素直に花嫁になどなれやしない。
けれど、今、旦那様の機嫌を損ねると一生この屋敷から逃げられないと感じた。先ずは、これから出掛ける旦那様に安心して家を空けて貰うことが大事だ。
そのあと、好きなだけ逃げれば良いのだから。