デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
ふわ、とその肌と夜着から花の香りだろうか、甘くて優しい匂いが彼を誘った。

目を細め、すぐに抱きしめてしまいそうになるのをこらえてうなずく。

「前に、そなたと街に出たときに、今度酒も一緒に飲もうと言っていただろう?だから、用意させた」

「あ、そうでしたね」

笑って、グラスをとって王に渡す。

「いっぱい種類があるんですねー」

瓶を一本取って、王のグラスに中身を注いだ。

桜はあまり強くないものを注いでもらい、少しはにかんでカチン、とグラスを合わせた。

「うーん、やっぱり何か悪いことしてるみたいです」

一口飲んだ桜が、苦笑いして王を見た。

「悪いこと?」

「ええ。私の国、20歳が成人でしたから」

「20歳とはまた……ゆっくりと大人になる国だな」

「こっちが早いんですよ。15歳って、中3だもの」

頭を揺らして、またその甘めの酒を飲んだ。

「でも、慣れるとおいしいですね」

笑う彼女に、からかうような口調で言う。

「そなたが飲んでいるのは、ほとんど果実水みたいなものではないか」

「えー…結構フワフワになりますけどねえ。王様のは?」

そっと彼の手の中のグラスをのぞき込んで、首をかしげた。


< 1,180 / 1,338 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop