デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
それにハッと気づいた桜が、あわてて身を縮ませた。

「あの、これは……」

耳まで赤くしながらパクパクと口を動かす。

その両手をつかんで、自分の方へ体を開かせた。

「……意外だな。そなたが、そんなものを身につけるとは」

「あの、ここ、これはシディさんが作ってくれて……」

「だが、実際着たのはそなたではないか」

「あ……」

くすくすと忍び笑いをして、そっと薄い裾を手に取った。

「何だ、そなた、案外楽しみにしていたのだな」

からかうようにそう言って、ぱっと手を放し、その裾がひらりと落ちた。

(やっぱり……着なければよかった)

浮かれた自分が恥ずかしくて、自分の容姿を考えると情けなくて、泣きたくなってくる。

赤い顔をうつむかせ、その目に溜まった涙がこぼれようとした時。

はあっ、と大きなため息が聞こえた。

「……お手上げだ。やはりお前の前では、つまらん見栄など張れない」

打って変わって頬を染め、眉は切なく寄せられ紫の瞳が揺れていた。

次の瞬間、その腕に抱きしめられる。

「ダメだ、もう…。そんな格好で……我慢なんか出来るわけがない」

「へ……」

意味がわからない桜をグイと立たせて、その肩を抱き寄せたまま、もどかしげに部屋の奥へ連れて行く。
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