デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「そして……また何百年か経って、今のあなたのように、彼に深く愛される女性が、また現れるかもしれない。いや、今までにもいたかもしれない。彼の記憶からなくなっているだけで」

やめて。やめて。

「あなたは、彼の大勢の中の一人に過ぎないかもしれないんですよ。その事実に耐えられますか」

黒い瞳が潤み、涙があふれ始めた。

「やめて、エヴァさん………」

しゃがみこんでしまった桜を、エヴァは優しく抱きしめた。

「私が男だったなら」

苦しげに言う。

「あなたを王宮に、決して帰しはしなかったでしょう。私なら、あなたと同じ時を生きていける。あなたを唯一無二の女性にできる」

その顔を上げさせて、そっと涙を拭った。

「でも、もうそれは叶わないから。………辛いことを言ってすみません、桜さん。でも、あなたには幸せになってほしい。あなたのこれからの生涯に、一度も惨めで悲しい瞬間など、あってほしくない。だから……」

そっと手を取り、きゅっと握る。

「あなたに、おだやかな幸せをくれる人はいるはずです。きっと、あなたなら他に愛してくれる人がいるでしょう?どうか、よく考えて」

愛情と心配に、そのアイスブルーの瞳が一度揺れた。
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