デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
また、深く唇を奪われる。

ワンピースと一緒に、思考まで容赦なく剥ぎ取られていくように、その手は有無を言わさない動きだった。

熱に浮かされたように、彼がわずかに唇を外してささやく。

「可愛い桜……お前だけだ、私をこんなにさせるのは………」

白い肌を、ゆっくりとその手のひらがなぞってゆく。

「!」

「愛してる……ずっと………お前しかいらない」


同じ時を、生きては行けない。

私はこの人の、永い時の数ある一瞬で。

いつかは忘れ去られる。彼の名前のように。


どっと、視界が水彩絵の具のようににじんでいく。

(やだ。嫌だ………忘れられたくない。心の片隅でいい、覚えていてほしい)

好きだから。大好きだから。

でも、どうしようもない。

私が年を取る限り。この人が王である限り。


歯を食いしばって、涙をこらえる。

狂おしく自分を愛おしむ彼に、そんな表情を見せるわけにはいかなくて、桜はその首に両腕ですがりついた。

そんないつにない態度に少し驚いて、動きを止める。

「どうした、桜?」

顎をその引き締まった肩に乗せて、桜は小さく首を振った。

「ううん……私も、寂しかったから……甘えたくなったんです、あなたに」

そっとまぶたが閉じられる。

「ねえ王様…………ぎゅーって、してください」

声が震えないように、また腕に少し力を込めた。
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