デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「いや、王都武官ではあるが、王宮の勤務ではない」

アスナイが答えた。桜が首をかしげる。

「王都武官?」

「地方武官と王都武官があってだな、地方武官は主に王都以外の場所を守護し、王都武官はこの都を警護するんだよ」

シュリが説明すると、

「じゃあ、お二人はいつも、今日通ってきたこの街にいらっしゃるんですか」

「いや……俺らはまだ武官になって2年目だからな。まずは地方武官について、経験を積むんだ。王都武官の方が偉いなんて勘違いしてる連中がいるが、実戦実務に関しては、地方武官の方が優れた人材が多いんだよ」

シュリの言葉に、アスナイも言った。

「特に『魔』がよく出る地域の武官とその武官長にもなってくると、例外なく武勇にも人徳にも優れている。だから最近は地方武官を王都武官に転任させることもあるくらいだ」

「じゃあ、今はお二人はここじゃなくて、もっと離れた場所でお仕事されてるんですか?」

二人は頷く。

「俺とアスナイは全く同じ配属地じゃないが、まあ……お互いに隣の隣くらいの距離の街か」

「そうですか……じゃあ、私の事が片付いたら、戻られるんですね」

ポツンと、桜の小さな声が夜の闇に溶ける。

やっぱり、また一人になるのか……

(不安だなあ……でも、言葉がわかるようになっただけ、ましなのかな)
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