デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「!」

ハッとして、王は桜から身を離した。

危なかった。昨日今日とあれだけ自戒したのに、何という愚かな。

一方桜はそうとは知らず、緊張から解放されてパタパタと頬をあおった。

「大したことなかったですよね。でも、ありがとうございます」

「あ、ああ……」

自分の今の行動が分からない動揺から、桜の笑顔を直視できずに、王は顔をそらした。

「…あ、そうだ。今日のお昼、お菓子をありがとうございました」

「菓子?……ああ……」

まだ平静に戻れない頭で、昼に桜に菓子を届けるよう指示した事を思い出した。

「あの、でも少し女官さんたちに差し上げました。だから、女官さんたちを叱らないでくださいね」

「そうか。わかった…」

王が頷く。

「そうですよ、いくら私がこんな太ってても、あの量は一度には無理ですよ」

何だかさっきと違う様子を見て、軽く冗談を言ってみたのだが。

「違う!!そんなつもりではない!!」

弾かれたように桜の方を向き、顔を強ばらせた王が声を荒げた。
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