デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
思わぬ反応に、桜は驚いて目を見開いた。

「……じょ、冗談です……すみません」

てっきり笑って受け止めてくれるかと思ったのだが。

「……っ…そのような冗談は、好きではない。止めてくれぬか」

また顔をそらし、庭の方を向く王。眉はひそめられて、ほんのわずかに唇が震えていた。

微笑みを絶やさず冷静ないつもとは全く違った姿に、桜は小さくなった。

「す…すみません……空気読まずに……」

そのまま、重い沈黙が部屋に満ちる。



「……何故であろうな」

ややあって、ぽつりと王が呟いた。

「そなたと、出会ってまだたったの三日だというのに…これまで生きてきて、ついぞした事のない思いばかり、している」

申し訳なさに、桜はますます小さくなった。

「すみません……」

すると王は首を振って、桜を見た。

「違う。嬉しいのも、楽しいのも、焦るのも…すべてが鮮やかなのだ。そなたと話していると。…そして、たまに我を忘れそうになる。こんなことは、初めてだ」

「私が、異世界の人間だからじゃないでしょうか。だから、王様の予想に反したことを言ったりするんじゃ」

桜が少し考えてそう言うと、

「そうかな…分からんが、そうかもしれぬな」

「だから、私がお話する事がなくなったら、きっと王様も元に戻ると思います。そうなると、私がここにいられる理由もなくなりますし」


「私も、それまでにもとの世界に帰る方法を見つけなきゃいけないと思ってるんです」

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