デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「…ああ」
近侍に頷いて見せる。
「では、桜様を客用の宮にお連れいたします。失礼します」
一礼して、桜を目で促した。
桜ももう一度、王に軽く頭を下げ、カナンの横に並んで出ていく。
「ずっと外にいたんです……いたの?カナン」
「ああ」
「退屈じゃないの?」
「仕事だ、退屈も何もないさ」
「そうなんだ。我慢強いね」
「嫌でもそうなる。そこは武官より自信はある」
「あはは、うん、確かにそうかも……」
屈託なく話し、笑い声を上げながら、同い年の少年少女が歩いてゆく。
その後ろ姿を見ながら、また王の中に苦い思いが広がっていた。
さっきまで、桜は自分の隣にいたのに。今は、カナンの隣で楽しそうに話している。
フウッ、と鋭く息を吐いた。
(何を、馬鹿な事を考えている。私の愛すべき若い花が二輪、仲良く寄り添っているだけではないか。微笑ましいことなのだ)
こめかみを指で押しながら、広い宮に戻っていく。
少し、冷静にならなければと思った。
近侍に頷いて見せる。
「では、桜様を客用の宮にお連れいたします。失礼します」
一礼して、桜を目で促した。
桜ももう一度、王に軽く頭を下げ、カナンの横に並んで出ていく。
「ずっと外にいたんです……いたの?カナン」
「ああ」
「退屈じゃないの?」
「仕事だ、退屈も何もないさ」
「そうなんだ。我慢強いね」
「嫌でもそうなる。そこは武官より自信はある」
「あはは、うん、確かにそうかも……」
屈託なく話し、笑い声を上げながら、同い年の少年少女が歩いてゆく。
その後ろ姿を見ながら、また王の中に苦い思いが広がっていた。
さっきまで、桜は自分の隣にいたのに。今は、カナンの隣で楽しそうに話している。
フウッ、と鋭く息を吐いた。
(何を、馬鹿な事を考えている。私の愛すべき若い花が二輪、仲良く寄り添っているだけではないか。微笑ましいことなのだ)
こめかみを指で押しながら、広い宮に戻っていく。
少し、冷静にならなければと思った。