デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
そう桜が言うと、二、三回まばたきした後、何か分かったかのようにフフ…と笑った。

美しくて妙に艶っぽく、そして何か居心地の悪くなる微笑みだ。

「左様でございますの……我が君にお気遣い、ありがとうございます。でも、ご心配には及びませんわ。私達がちゃあんとお身まわりのお世話をしておりますから……」

濡れたようにつややかな唇を、口角だけ上げて言った。

「かえってお客様にそのようなご心配をおかけしてしまって……私共がいたらないせいですわね。申し訳ございません」

細い腰を折って、礼をした。

「あ、いえ……」

口調は丁寧なのに、なんだかねっとりとした拒絶が感じられる。

「あの、じゃあ王様はお一人で辛かったりすることはないんですよね」

桜が聞くと、クスッと娘が笑った。

「ええ…もちろん。私共がお慰め致しますから」

「そうですか…分かりました。じゃあ、私戻りますね」

場違いな所に来たようないたたまれなさを感じて、一礼して渡り廊下に出た。少し歩いて振り返ると、もう扉は閉じられていた。

(……何か、違う気がするんだけどなあ……)

なんだか自分の意図が、相手にゆがんで伝わった気がする。

もうすぐ日没だ。
桜はまた急ぎ足で自分の部屋に向かった。
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