デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
往復二回もすると、何となく、部屋までの道はわかるようになった。そんなに宮の深い場所にはないため、迷いそうな感じもない。

昨日、思い知ったことを反すうする。

(王様に『特別』はない。あったとしても、それはきっと私じゃない。そう見えるのは、王様が私の喜ぶように振る舞ってくれるからだ)

(体が辛かったりしても、王様の周りには、あんなに綺麗な女の人たちがいる。自分でそばにいてほしい女性を呼ぶことだって出来る。私が心配することじゃない……)

ぽっかりと開いた心の穴は、きっとすぐふさがるよね。

良かった、早く気づけて。後戻りができないくらい、舞い上がらなくて良かった。

私の役目をちゃんと果たして、早く元の世界に帰ろう。

きっと、前より少しは強く生きていけるはずだ。

やがて、いつもの部屋の戸口の前に立つ。今日はピタリと閉じられていた。

白いワンピースの女官が、そっと戸を叩く。

「我が君、桜様です。お通しいたします」

カラ、と戸を開くと、中にいた王が桜を見て笑った。

「桜、昨日は済まなかったな」

「いえ、お疲れは取れましたか?」

「…ああ、大丈夫だ」

少しバツが悪そうに目線をそらしたが、桜はそれに気づかずに部屋に入った。

「今日は、昨日の分までそなたの話を聞きたい」

「いいですよ。ちゃんと説明できるかは微妙ですけど」

苦笑いする桜に、手を差し伸べようとする。

するり、とその脇を通り過ぎて、座椅子に着いた。

「……桜?」

小さな違和感を感じて、彼女の名を呼ぶ。

「?はい」

自分をまっすぐ見上げる、黒い瞳。

「いや……」

気のせいか。そう思い直し、王も隣の席に着いた。
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