デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
『さてと…さっさと済ませるぞ。シュリ、そこの水と湯を』

熱で意識がフワフワとしている桜をベッドに寝かせ、アスナイは薬の袋を開けた。

『…お前、一体どういうシュミの持ち主なんだよ』

先ほどの店主とのやり取りに引き気味のシュリが、水差しと鍋を持ってくる。

『さあな』

嘘も方便だと説明するのも面倒くさく、アスナイは髪を一つに束ねる。

手早く粉末を数種類混ぜ、水を加えて練っていく。

『手慣れてんなー。さすが医者の息子』

素直に感心する同僚は、もぐもぐと肉の串焼きをほおばっている。

自分にない他人の長所を認め、褒めるのをためらわないのはシュリの美徳の一つだった。

褒められて、悪い気のする者はいない。

(…将来、武勇に優れた、人望のある将校になるに違いない)

ことあるごとに罵りながらも、日ごろからアスナイはそう彼を評していた。

調子に乗るので絶対、言ってはやらないが。
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