デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
聞いてなどいないように桜の訴えを殺して、優しく笑った。

「シュリ……さん」

「で、明日の朝大門が開いたら、王都を出よう」

桜は小さく頭を振る。

「無茶です、シュリさん……王都を出たからって、どうするつもりですか」

微笑みをおさめて、桜を見つめた。

「どうとでもなるさ。旅をしながら暮らしてもいい。王の目の届かないような、遠い場所で家を借りて住んでもいい。お前さえいれば」

そっと、その白い顔を上向かせた。

「だめです、王様の目の届かない場所なんてない……きっとすぐに捕まります。それに」

眉を寄せて、苦しそうにシュリに言う。

「そんなことしたって……私の気持ちは変わりません。どこにいたって……」

その言葉に一瞬そのブラウンの瞳を見開いて、グッと顔を歪めたかと思うと、唇を乱暴に重ねた。

「う!うぅ!」

頭を振って、すぐにそれを外した。
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