MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~
「あそこ……あのお店が建つ前はレトロなカフェだったんです」

「……」

「その時に思い出があるんですよね。……もう十年も前の話ですけど」

 こんな話を聞けば、彼は引いてしまうだろうか。
 なにを夢うつつのおとぎ話をしているのかとあきれられるかもしれない。
 そんな些細なことを覚えているなんてバカじゃないのか、と。

「十年前にそこで出会った人のことが、未だに忘れられません」

 この話は当時から友達だった樹里にしか話していない。
 ペラペラと喋ってしまうにはもったいない気がして、誰にもしていない話なのだ。

 だけど今、日下さんには話したくなった。
 聞いてくれるなら、話したい。

 ―― 十年前の、あの雨の日のことを。

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