MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~
 こうして線香を上げに来てくれる友達が父親にもいたのかと思うと、安心したし微笑ましくなったけれど。
 どのみち俺には関係ない。
 父とこの人は縁があったかもしれないが、俺との縁はない。
 頭のどこかで、そんなふうに思って冷めていた。

「なんでも相談に乗るから。困ったことがあったら遠慮なく連絡しておいで」

 父と暮らしたこの家で、このままひとり暮らしをすると言った俺を心配してか、日下さんはテーブルの上に名刺を置いてやさしく微笑んだ。
 その緩い笑顔が、根拠はないが嘘偽りのないものに思えた。
 頼るつもりなんて微塵もなかったのに、貰った名刺は捨てられずにいた。

 それどころかこちらは頼る気がなかったのに、日下さんは俺に連絡をしてきた。
 供養はきちんとしなければダメだとか、大学受験するなら準備を始めないととか、いつでも俺の世話を焼いてくれたのだ。
 頼んでいないのだからお節介だ。
 そうは思うものの、構われるのが妙に懐かしく感じた。

 母が出て行ってからは、父は俺に無関心だった。相手をしてほしくても、父から相手にされずに育った。
 なので誰かから構われるのは母親と暮らしていたとき以来だ。

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