MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~
 日下さんが大きな会社のCEOで金持ちだということは、しばらくあとになって知った。
 受験を考えている大学の資料や参考書に至るまで、頼みもしないのに持ってくる。
 変なおじさんだ。なにを考えているのかわからない。
 俺にやさしくしたって、親切にしたって、なにも得をしないのに。


 無事に大学入学を果たした俺の元へ、再び日下さんが現れた。

「アメリカの大学に留学したいなら思い切って行けばいい。MBAを取得するのもいいな。応援するよ」

「いや。無理ですよ。さすがにそんな費用を払う余裕はありません」

「学費なら私が出そう」

「あなたにそんなことまでしてもらえませんよ」

 なぜこの人がここまで俺に構うのか、正直理解に苦しむ。
 俺の父親が大学時代に親友だったから? たったそれだけのことで?
 なんのとりえもない普通の大学生の俺に、留学や大学院まで勧めるか?

「来人、君は優秀な人間だ。特に経営学においては。残念ながら自分自身でそれに気づいてない」

 小さいころからたしかに勉強は得意なほうだったが、それもこんな家庭環境のせいで途中でめちゃくちゃになった。

 経営難で会社を潰した男の息子ですよ、俺は。
 日下さんは買いかぶりすぎている。俺に経営の才があるわけがないと思うけれど。

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