MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~
 そこまで言われたら素直に従うしか道は残されていない。
 日下さんへの思いが膨れ上がる前に離れないと。そう思うのに拒絶することができない。
 ……もしかしたらもう手遅れなのかもしれないな。

「お忙しいのにすみません」

 ゆったりとハンドルを握って運転する日下さんに、そっと声をかける。

「気にしなくていいよ」

 チラリと見た横顔も、眉目秀麗という言葉がピッタリで本当に綺麗だ。

「人生は……思ってもみないことが起きるな」

 前を見て運転しながら、ポツリと日下さんがそうつぶやいた。
 なんの脈略もない言葉に私は小首をかしげる。

「予期しないようなことがたまに起きる。……それがあるから人生は面白いと言う人もいるが」

「……はぁ」

「君もそう思えたらいいな」

 予期しないようなこと……私にとっては、この前の事件がまさにそうだ。
 自分の身にあんなことが起こるなんて思ってもみなかった。
 てっきり彼はそのことを言ってるのかと思ったけれど……

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