君は僕の光
目玉焼きがジュージューと、遠く聞こえる。


「…どうしたの?急に」

「いや、なんとなく…」


やっぱり聞かないほうがよかったかな。



でも、お母さんは微笑んだ。



「本当じゃないかしら」


…え?



お母さんは目玉焼きをお皿に移した。



「何かを失って悲しい気持ちはもちろんあると思う。でもね、世界はそれだけでできてないわ。失ったもの以外にたくさん持ってるんだもの。大事なのはね、失ったもの以外のたくさんのものを持ってることを幸せだって思うことじゃないかしら」



失ったもの以外のたくさんのものを持っていることを、幸せだって思うこと…?



「お母さんも上手く言えないんだけどね」


お母さんは笑って舌を出した。



お母さんも、蛍と同じようなことを言ってる。



すごく、立派だと思った。



反対にやっぱり、自分がすごく小さく感じた。
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