命の灯が消える、その時まで
「う、わぁ…」
こんな立派なピアノを見たのは、久しぶり。
小学校までずっとピアノを習っていた私。
中学に入ってからは作曲とかをメインにやるようになったから、先生のレッスンなんかは受けなくなった。
先生の家にあったのはグランドピアノだけど、うちにあるのはアップライトピアノ。
でも、ここにあるのはグランドピアノだった。
思わず駆け寄って、蓋に手を伸ばす。
学校なんかのだと鍵が閉まってるらしいけど、ここのは閉まっていなかった。
それをいいことに、蓋を開け、椅子を引いて座った。
…懐かしい感覚。
白と黒のまだら模様に誘われるように、私はポーンと鍵盤を叩いた。