結婚も2度目だからこそ!
それから2曲ほど吹き終わり、一部最後の曲になる。
演奏者が座って楽譜をめくったり、楽器を確認している中、舞台の最上段に座っていた先輩ひとりだけが立ち上がって、舞台の一番前へとやって来る。
そこで初めて、曲中でのちょっとしたソロではなく、まるまる一曲ソロを吹くと知った。
実はチケットを提示したとき、パンフレットを貰ったのに、圭悟からのメールのせいで、プログラムをちゃんと見る余裕がなかった。
だからそんなトランペットのためのソロ曲を吹くなんて思わなくて。
……そんな曲を、私のために?
――胸が高鳴る。
それは緊張のような、それでいて違うもの。
色んな感情が混ざり合わさって、私の心臓を激しくさせる。
やがて、演奏が始まった。
バックの演奏に合わせ、先輩のトランペットの音色が優しくホール中に響く。
緩やかな川の流れのようなメロディー。
その音は私の心の中に染みわたって、自然と涙が零れていく。
吹く姿は昔となんら変わってはいなかった。
楽しそうに、幸せそうにトランペットを奏でる。
だけど、その音は昔のような明るいだけの音ではなくて、もっと洗練された音だった。
先輩の想いが込められた、音。
その音は私に語りかける。
――元気になってね、と。