結婚も2度目だからこそ!
……胸の高鳴りが止まらない。

"会えないと思っていたから嬉しい"って。

お世辞でも先輩にそんなこと言われたら、私も嬉しくなっちゃうじゃない。


「どうしたの京香、顔が赤いけど」

有希に言われて、ハッと気付く。
頬を手で触るとやたらに熱い。

店の中は少し薄暗くハッキリと顔色の変化が見えないはずなのに、それでも分かってしまうくらい、私の顔は赤くなっていたようだ。

「あ、いやこれはちょっと」

「なんだかんだ言って、京香も先輩が来るの楽しみなんでしょ?」

「え?」

あぶら取り紙をペタペタと肌に付け、ニヤニヤと笑いながら有希は言う。


まさかあの一言でこんなに顔が赤くなるなんて。
そんなちょっとした事で舞い上がっちゃうような年でもないのに。


私がパタパタと手で顔を扇いでいる間に、二人は化粧道具をテーブルの上に置いて化粧をし直し始めていた。

「……二人ともなにしてんの?」

「なにって、化粧直してんのよ。先輩の前に崩れた顔見られたくないじゃん」

「そうよそうよ、少しでも可愛くみられたいじゃない!」

「こんなに薄暗くちゃ分かんないよ。今のままでも大丈夫なのに」

「何言ってんの!念には念をだよ!!」


それから20分ほど経って、再び携帯が鳴る。
どうやら先輩が店に着いたみたいだ。

私は先輩を迎えに、店の出口へと向かった。


「ゴメン遅くなって。あと無理聞いてくれてありがとう」

「う、ううん全然、まだそんなに飲んでないですから。それに先ぱ……智樹さんが来るって聞いて、友達も張り切って化粧直してたくらいだし、問題ないですよ」

「え?化粧直し?あはは、そんなに気合入れなくても」

「一応智樹さんは、うちらの学年じゃ憧れの先輩ですから」
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