十九時、駅前
第7章
その日は午前中出張で、
午後から出社するんだと、
片桐課長は朝早くに家を出た。

玄関までお見送りして、
部屋に戻りながら軽く伸び。

……あれから。
私は完全に、自分の心に蓋をした。

私はなにも気付いてない。

そういいきかせて、
全部全部気付かないふりを続けた。

そうじゃないと、壊れてしまいそうで怖かった。

「本でも読むかなー」
 
いつもより一時間早く起きたから、
時間はたっぷりある。
ベッドまで戻ってきて、
枕元に私の携帯と
違う色の携帯があることに気が付いた。

「あ……」
 
片桐課長、携帯忘れてる。
会社携帯は持って行ってるから、
とりあえず問題はないはず。

手にとって画面を見て。
はたと思った。
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