ウサギの王子に見初められ。
しっかり伸ばすと「うわぁ、痛くなくなりました」と驚いたように言い、すぐ立ち上がろうとするのを押しとどめた。
「しばらく安静にしていてください。痛みが引いても、今日はプレーしないほうがいいです」
「はい。ありがとうございます」
半信半疑だった彼が、神妙に私の話を聞く姿勢になった。懐かしいな、こういうの。
言うことを聞かないちびっ子たちにもよく言って聞かせた。
「普段あまり運動してないですよね? 一度怪我すると癖になるので、プレー前後に必ずストレッチをするようにしてください。たぶんつりやすい足なので気を付けたほうがいいですよ」
気づくと相手チームの皆さんが、私たちのほうをじっと見ていた。
「あ!あの!急に勝手にすみません。私向こうのチームの応援に来てて、それで怪我を見ちゃって」と慌てて言い訳する。
やばい。体が勝手に動いちゃったけど、この人たち全然知らない人だった。
「いえ!マネージャーさんなんですよね。うちそういうのないんで、ほんと助かります。俺たちが怪我したら冷やしとけとか適当言っちゃったんで」
体格のいいハキハキした男性に言われる。うん、わかるけど。
「まず冷やすの、基本ですよね。でもつってるみたいだったから、固くなっちゃうと困るから」
もごもごとした説明になる。でもなんでも冷やすだけじゃだめなんだよね。
周りの皆さんからも、大きな声で
「ありがとうございます!」
「ほんと、助かりました!」
と口々に言われて恥ずかしくなって逃げ帰った。
こっそり帰って沙耶の隣で小さくなりつつ、応援に専念した。
マネージャー魂、しみついてるんだなぁ、私。でも、変にこじれなそうなケガでよかったよ。