ウサギの王子に見初められ。
「あのさ、オレいつも年明けてから実家帰ってるから、年越しそばは一緒に食べない?」
急に話題を変えられて、誘いに一瞬反応できなかった。
「またネギ入れてもいいよ。真奈ちゃん好きだったよね」
いつも通りにこっと、でもちょっと私の出方を待つように三上くんが微笑む。
部屋で、二人でってことだよね。
付き合うことになったあの日以来、三上くんの部屋には行ってない。忙しかったのもあるし、抱きしめられて『無防備に入っちゃダメだよ』ってささやかれたし、すごい意識しちゃってる。
前にちょっと誘われた時もごまかして行かなかったけど、三上くんはきっとわかってる。
「襲わないよ、夜に会っても」
つないだ手にちょっと力を込めながら流し目気味に言われて、かーっと体が熱くなる。
こんなこと言われるって、やっぱり私挙動不審なのかな。自意識過剰? ちょっと前には全然気にせず上がりこんで寝ちゃったりしてたくせに、今更!
「急いでないから。真奈ちゃんがオレを好きになってくれるまで待つから、安心して」
小声で優しく言われた言葉に驚いた。『好きになってくれるまで待つ』? どういうこと?
「というわけで、今日も予行演習でうちでご飯食べようよ。オレ作るから。食べてって平気なんだよね?」
いつも通りに戻った口調で明るく聞かれた。
「うん。夕飯いらないかもって言ってきたけど」
「じゃあ買い物して帰ろっか。何食べたい?」
そのまま駅に向かい、三上くんの得意料理だというビーフポトフを作ってもらうことにしながらスーパーに寄っていく。