遠回りして気付いた想い
友達以上・・・悠磨side
オレは、渡辺悠磨 十五歳。

今日は、クラスの連中と図書館で勉強会だ。

意中の亜耶(鞠山亜耶)も一緒だ。

今日出来れば…。何てな。

「悠磨お兄ちゃん。何してるの?」

二つ下の妹千春が、オレを見て不思議そうな顔をしてる。

只今、洗面所を独占してる(亜耶も来るんだから、身嗜みもキチンとしておかないとな)

入り口のドアを開けっ放しにしてたから、そこを偶々通った妹に見つかったのだ。

「もしかして、亜耶先輩とデート」

妹が、よからぬ事を連想してるのが伺える。

それだったら、どんなによかった事か…。

「違う!」

オレは、そう叫んだ。

叫ぶ必要は、無かったけど…ついな。

妹は、亜耶と同じ部に入ってるから、先輩後輩の中で、亜耶にとてもなついてるんだ。

だから、亜耶に関しての事は逐一妹から報告が上がる。

「なんだ、なんだ。何を大きな声を出してるんだ悠磨」

そう言いながら、顔を出す兄貴。

狭い洗面所が、更に窮屈になる。

「篤お兄ちゃん。悠磨お兄ちゃんデートなんだって」

千春が兄貴に言う。

おい、千春。オレ、さっき訂正したよなぁ。何で、デートになってるんだよ。

千春の言葉を鵜呑みにした兄貴が。

「おっ、悠磨にもやっと春が来たか」

って、訳の解らんことを言い出す。

「ちがーう。今から、クラスの連中と勉強会なんだよ」

オレは、再度叫んだ。

「ほー。その割りには念入りにチェックしてるみたいだが?」

う…。

兄貴の鋭い指摘に、何も言えなくなるオレ。

その場から、逃げる為にわざと腕時計に目をやる。

「ヤバイ、遅れる」

と口にして、洗面所から出て、玄関に置いていた鞄を掴み、靴を履くと家を出た。

「亜耶先輩に宜しく」

「彼女、ゲットしてこいよ」

二人の声が、外にまで聞こえてくる。

バカ兄貴。

そんなに大きな声で言うんじゃねぇ。

恥ずかしさの中、待ち合わせの場所に向かった。
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