遠回りして気付いた想い
コンコン…。

お兄ちゃんの部屋のドアをノックする。

「はい」

部屋の中からお兄ちゃんの声(当たり前だけど)。

「お兄ちゃん、亜耶だよ。入っても良い?」

遠慮がちにドア越しで聞く。

「いいよ」

ドアを開けて、中に入る。

白と黒で統一された部屋に本棚には、ところ畝ましと難しい本が並んでる。

お兄ちゃんは、トレーナーにチノパンというラフな格好でカーペットの上に胡座をかいて座って、難しい顔をして何かの資料を読み込んでいた。

その手を止めて、私を見ると。

「亜耶、どうした?」

何時もの優しい表情に戻って、私に横に座れと言わんばかりに床をポンポンと叩いてる。

私は、お兄ちゃんの横に座る。

「お兄ちゃん、由華さんと結婚するんだってね。おめでとう、よかったね。由華さんがお義姉さんになってくれるなんて、嬉しいよ」

今しがた、お母さんから聞いたことを口にし、自分の事の様に喜んでしまった。

「ありがとう、亜耶。由華も亜耶の事、本当の義妹だって言ってたぞ」

お兄ちゃんが、照れながらも嬉しそうに言う。

珍しい。

「ただなぁ。一つだけ気掛かりがあるんだ」

お兄ちゃんが、心配そうに私を見てきた。

「何?」

見当がつかず、お兄ちゃんに聞く。

「遥の事」

声のトーンを落として言う、お兄ちゃん。

「遥さん?」

何で?

キョトンとする私に。

「俺が家を出たら、あいつの暴走を止める奴が居ないだろ?」

あぁ…。

今まで、遥さんの暴走を止めていたのは、紛れもなくお兄ちゃんだ。

お兄ちゃんが、家を出たら止める人が居なくなる。

その事を気にしてるみたいだ。

「大丈夫だよ。高校に入っても部活には入るつもりだし、土日も部活である程度潰れるだろうから…」

今は、憶測でしか言えない。

それでも、お兄ちゃんが気兼ねなく出て(?)行けるように言う。

「亜耶…。本当は、俺が守ってやりたいが、俺には由華が居るからな」

お兄ちゃんが、眉間を下げて困ったように言う。

本当に心配性なんだから。

「うん。大丈夫だよ。私は、遥さんの事自分で何とかするから、お兄ちゃんは、由華さんの事大切にしてください」

お兄ちゃんの気遣いが嬉しかった。

「亜耶、ありがとう。大好きだよ」

お兄ちゃんが、笑顔でそう言うから私も。

「うん。私もお兄ちゃん大好き」

って、お兄ちゃんに抱きついた。

お兄ちゃんは、私の頭を撫でてくる。

この大きな手で撫でられるの好きだった。

それが、無くなるのは少し寂しいけどね。

優しいお兄ちゃん。

私の理想の人。

お兄ちゃんみたいな人、何時私も出会えるといいな。

「まぁ、結婚までは日もあるし、そに間に落ち着いてくれればいいんだがな」

お兄ちゃんが苦笑する。

「そうだね。それは、遥さん次第だよね」

私も苦笑した。




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