遠回りして気付いた想い
「クリスマスイブ、今年も家族で過ごすって?」

お兄ちゃんが、聞いてきた。

「ごめん。お母さんにもさっき話したんだけど、クラスの友達と息抜きがてら、パーティーすることになっちゃって…」

私は、申し訳なくそう告げる。

お兄ちゃんとの最後のクリスマスイブなのに…。

「そっか…。じゃあ、プレゼントだけ用意しておくな」

お兄ちゃんが仕方無いなって顔をする。

そんな顔、しないで欲しいな。

「プレゼント、要らないよ。私の分も由華さんに使ってよ」

私がそう言うと。

「中学生が、何を遠慮してるんだよ。それに、由華の分はとっくに準備してある」

お兄ちゃんが、私の額を指で突っつく。

「でも…」

「気にするな。それなりに稼いでるし…。亜耶は、俺にとって欠けがいのない、たった一人の妹なんだからな」

そう言って、優しい笑顔を見せてくれる。

「うん…、ありがとう」

お兄ちゃんの気持ちが嬉しくて、お礼を言う。

「…で、その事、遥には言ってあるのか?」

お兄ちゃんの言葉に首を横に振る。

「言うと、大変なことになりそうだから…。お兄ちゃんも言わないでよね」

私は、お兄ちゃんに釘を刺す。

「わかってる。あいつの事だから、仕事が忙しくて、亜耶に会いに来れないだろ」

お兄ちゃんが、思い出すように言う。

確かに。

この時期の遥さん、忙しそうだものね。

アパレル関係の仕事だって言ってたし…。

「まぁ、パーティー、楽しんでこいよ」

お兄ちゃんの優しい眼差しに。

「うん」

と頷き、お兄ちゃんの部屋を出た。
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